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夏の、広島、倉敷へ(2)ホンモノの“単車”来る [イマドキのTRAMたち(路面電車)]

<鉄>であっても、そうでなくても...
鉄道に関する用語の「本当の意味」と、実際に使われている意味・用法が違うことが
少なくない。よく言われるように山手線というのは“丸く1周する”路線ではない。
(俗に「山手線」といわれる環状運転は、山手線・東海道本線・東北本線の組合せ)

1番線、2番線...というのもそう。線路の番号であってホームの番号ではない。
JRでも東海より東のエリアの各社で「1番線ホーム」のような言い方が使われるが、
ある程度の駅ならば、側線や留置線、待避線など、乗降用のホームがない線路がある。
そこにも正式には「※番線」という数字が付いているので、食い違いが生じていること
がある。(西日本の「※番のりば」という言い方の方が誤解は無いわけで...)

「そんなこと、利用者には関係ないし...」と思うかも知れない。
でも、例えば、撮りたい列車をチャーターする「撮影臨」に参加するときなど、ここの
違いは意外と重要になる。「※番線に入線してくるシーンを撮りましょう!!」と
申し合わせて、みんなでカメラを構えていたら...という経験をしたこともある。

さて、鉄道車両の構造による分類に「単車」というのがある。

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【2018年6月24日10時01分】 広島電鉄本線・土橋電停

いまでは乗ることができるのも、博物館や遊戯施設のものを除けば数えるほどだろうか。
でも、広電には正真正銘の「単車」が居る。ただ、難しいのは、広電では「単車」
というコトバを別の意味に使っている...ということ。

本当の、正真正銘の、単車を撮りたい...というのが、
先日、広島を訪れたキッカケだった。そのお目当ての電車が「101号車」である。

……  ……

いまの鉄道車両は、基本的に“ボギー車”。

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【2018年4月7日12時41分】 富山県高岡市吉久付近

車両の前後に2つの台車が付いていて、合わせて1両には4軸の車輪が付いている。
そうしていることで、車体も大型化できるし、乗り心地も安定する。

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一方、鉄道黎明期の車両、いわゆる“マッチ箱客車”などは2軸。
それが最後まで残ったのは貨車だったが、ほぼ全面的にコンテナ化が済んでいる今、
“2軸車”を見つけることはなかなか困難なのである。本当は、大きな違いがあるが、
ザックリ言ってしまえば、ここでは“2軸車”と“単車”が“Nearly equal”として
差し支えない。2軸なので、車体を大型化できないこと、さらに振動が激しく乗り心地が
悪いことなどが問題となり、国鉄などの旅客車では例外的なものを除いて、
かなり早い時期に姿を消した。でも、高速運転が必要なくて、車体も小ぶり...という
ことで、路面電車では長らく“2軸単車”が活躍した。

それらが急速に淘汰されるのは、昭和40年台以降。大都市で路面電車の廃止が続き、
廃止となった各都市の電車で車齢の若いものが他車に譲渡され...

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【2016年5月7日10時37分】 岡山電気軌道東山線・東山電停付近

例えば、いまも岡山電気軌道に東武日光軌道線の電車が居るのも...

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【2017年8月31日15時21分】 広島電鉄宇品線・市役所前-鷹野橋

広島電鉄に半世紀前に廃止になった神戸市電の電車が居るのも...
廃止路線からの譲渡車を使って、“単車”の置換えが進められたことと無関係では無く。

だから、1978年(昭和53年)生まれの<変態鉄>が営業路線で“単車”に乗ったのは
数えるほどしか無く。

そんな中、1912年(大正元年)に、いまの広電の最初の区間が開業したときに導入
された100形電車を模して、1984年(昭和59年)に登場したのが、今回のお目当て
101号車である。当時、市内の交通公園で静態保存されていた“2軸単車”(150形)の
機器を流用して、車体は新製したのだという。

いまでは、江波-横川駅の「8号線」で春と秋の毎週日曜、午前中に2往復の運転に
充当されている。空港から大急ぎで駆けつけたのは、それが撮りたかったから。


2018年6月24日(日)晴れ

西広島・宮島口方面に向かう“本線格”の「2号線」は十日市町から土橋まで1区間だけ
江波・横川線と同じ線路を走る。その南側、土橋電停に降り立ったのだった。

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【2018年6月24日9時50分】 広島電鉄本線・土橋電停

広電の公式サイトでチェックしてきた運行ダイヤによれば、すでに江波を出発している
時刻になっており。まもなく、土橋にも到着しそうな...

電停ホームの南端に陣取って、もちろん制約の多い場所だが、いろいろと撮り方を検討。
横川駅・広島駅方面のホームから撮れば、逆光になって当然だったが...

落ち着いて考えれば、午前10時なら線路の東側に立った方が光が回るのに...
“寝不足で判断力が鈍っていたから”ということにしておきたい。

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【2018年6月24日9時55分】 広島電鉄本線・土橋電停

続いて、信号が変わって、後ろから5000形グリーンムーバーが到着。
車体長30メートルに達する5車体連接車が続行して入ってきても停まれるだけの
ホーム長が確保されている。

そんなシーンを撮っていると、交差点の向こう、江波線を北上してきたのが...

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【2018年6月24日9時58分】 広島電鉄江波線・舟入町-土橋

まさに“威風堂々”といった感じ。吊り掛け音も軽やかに...
大通りの中央に、石畳軌道がしっかりと残っているのも、広電のスゴいところ。

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【2018年6月24日9時58分】 広島電鉄江波線・舟入町-土橋

その姿は、ファインダーの中で確実に大きくなってきて。

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【2018年6月24日9時59分】 広島電鉄江波線・舟入町-土橋

集電装置はZパンタだが、前面には排障器ではなく“救助網”も備えて。
<変態鉄>にとっては写真でしか見たことが無い大正時代の路面電車の姿である。

細かいところでは、ヘッドライト。腰部1灯の“おへそライト”は、路面電車では
見慣れたスタイルだが、よく見ればライトの前にレンズが付いていないような...

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【2018年6月24日10時00分】 広島電鉄江波線・土橋電停

宮島口・西広島からの本線の線路に合流すると土橋電停に到着である。
この電車、いまでは非常に珍しい“二重屋根”になっている。基本的には明かり取り
だが、一部は内側に倒れるように開けることができて、通風機を兼ねた構造。

さらに、この写真、よ~く、目を凝らすと後ろから京都市電1900形が続けてやって
きていることも確認できる。ラッシュ時で無くても次々に電車がやって来て
ダンゴ状態になるのも、広島電鉄の特徴である。

これは撮っていて飽きないのだが、でも、今回のように特定の1両を撮りたいときは
被られるリスクが高まるわけで...

結果オーライではあるが、なかなか悩ましい部分でもある。

……  ……

1号線から9号線まで市内区間の運行系統が複雑になっている広電、主要電停のホーム
には次の電車の到着までの時間を示す電光掲示板が付いている。

フルカラーLEDで、路線図に合わせた色分けの系統番号、行き先、車種が表示される。

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【2018年6月24日10時02分】 広島電鉄江波線・土橋電停

見ていると「連接車」の標記が増えたのが、時代の流れなのかも知れない。
そんな中、半分くらいの電車は「単車」と標記される。

そう、すでに“単車”という語、広島では「2軸車」ではなく「ボギー車」を指して、
「連接車では無い車両」の意味で使われているのである。

そんな広電101号車撮影記、まず、土橋電停で停車中の姿も撮って...(つづく)

(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。

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