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2015年8月「吊り掛け駆動」の電車を追って(7)岡崎に揖斐線!? [保存車・廃線跡]

電制、冷房付きの吊り掛け電車、そんな何とも言えないアンバランスさ。
でも、線路端で“聴いて”いるとスピードを上げ、迫力の吊り掛け音を振りまき
疾走する“赤電”クハ85-モハ25編成。その話題をご紹介できるのは...

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【2015年8月15日11時57分】 遠州鉄道線・積志-さぎの宮

やはり、名鉄岐阜線は自分にとっては“思い出の路線”。
ついつい無意味に語ってしまうので、もう少し、かかりそうなのである。
浜松の吊り掛け電車の話題は、あと数日、お待ち下さい。その間に“サプライズ”!?

いやいや、余計な事は言わずに。今日は、普段より、かなり理屈っぽいお話(?)。
自分が生まれる5年前にひっそりと消えていった1両の電車の話題である。

……  ……

2015年8月14日(金)晴れ

<鉄>用語の中で、「連接車」か「連節車」かは表記上、非常に迷うところ。
自分としては後者の方が、その姿を、よりうまく表現しているように感じるが、
この記事を書くために調べてみたら、JIS(日本工業規格)に照らして、今日の話題には
「れんせつしゃ」を「連接車」と書く方がより正確であるらしい。ちょっと残念。

さて、予め、フツーの人向けにごく簡単に説明しておきたい。
相変わらず「メカに弱い理系人間(笑)」の自分、テキトー解説だが...

鉄道車両、特に旅客車を“台車の付き方”で分類するのなら、
その車両構造は「単車」「ボギー車」そして「連接車」といったところになる。

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【2013年11月3日10時38分】 関東鉄道常総線・水海道車両基地

いま、日本中の鉄道車両(旅客車)のその多くは20メートル級の車体を持つ。
その車体の前後に1つずつ、例えば写真のような台車があり、それで車両を支えている。
ごく簡単に言えば、そういう構造が「ボギー車」。
国内の鉄道車両(旅客車)は路面電車から新幹線まで90%以上が「ボギー車」かと...

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単車とは、鉄道黎明期の“マッチ箱客車”のような感じ。構造上、車体長がのばせず、
また揺れが激しく乗り心地が悪いので、昭和40年台には一部の路面電車を除いて
現役ではほぼ見られなくなっていった。

そして、車体間の連結部に台車が付いているものを「連接車」と呼ぶ。
乱暴に言えば、台車が連結器としての役割も持っているようなもの...と言うこと。
もちろん、運用途中で編成を分割することは不可能。また、意外と台車構造が
複雑になるようで、日本国内に限れば採用例は多くない。

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【2014年2月9日12時59分】 小田急小田原線・秦野駅(後追い)

一般的な鉄道線で、高速運転を行う列車としては小田急のロマンスカーくらいか。
しかし、路面電車では、交差点で90度曲がる急カーブがあるからだろうか。
連節構造の電車はかなり多い。富山のトラムなど、すでに「連接車王国」の様相。

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【2013年10月30日8時33分】 福鉄福武線・サンドーム西-家久

名鉄岐阜市内・揖斐線も美濃町線も、1980年台以降は連接車が大活躍だった。
それらの多くは、現在、福井鉄道に転じて塗装だけ変えて活躍中。

でも、その前の時期、「早すぎた連接車」が1両だけ居た。それがモ401号車である。
後輩の連接車たちがデビューするより10年ほど早く、1973年(昭和48年)に
ひっそりと引退したのだった。

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【2015年8月14日12時39分】 愛知県岡崎市・南公園付近

それが、静態保存されているのが、なぜか愛知県岡崎市の公園。交通広場の一角に...

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【2015年8月14日12時40分】 愛知県岡崎市・南公園交通広場

1973年(昭和48年)廃車の翌年、1974年にこの公園に来たとのこと。すでに40年以上。
上屋付きとはいえ露天での保存にしては保存状態は悪くない。交通公園ということで
夜間は閉鎖されるから、ということもあるのだろうか。

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【2015年8月14日12時43分】 愛知県岡崎市・南公園交通広場

説明板にこの車両の特徴が簡潔にまとめられている。
この電車、昨日までの記事で取り上げた“丸窓電車”モ510形とは“同期”にあたる。
1926年(大正15年)の製造。モ510と同じ美濃電の電車、「モ110形木造単車」。
車体長9メートルあまり、いまの電車から見れば半分ほどの長さ。
路面電車だったとしても小ぶりな車体と言うくらいの小型車。

1952年(昭和27年)その同型の単車2両を連接車に改造したのがモ401号車。
(連接車は、扱い上は「1両」。現役時代は2車体ともに「401」と表記されていた)
上の写真、車体側面裾部にある切り欠きの位置が、単車2両を改造した証。

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【2015年8月14日12時45分】 愛知県岡崎市・南公園交通広場

この電車は、実は揖斐線生え抜きだったのである。
当時、多く在籍していた美濃電引継の大正生まれの小型電車、輸送力増強の関係で
順次、この「2車体連接構造」に改造することになっていて、その第1陣として
登場したのが、モ401号車だったのだ。だが、連接化改造は思いの外、コストが
高く付いたそうで...、モ401で懲りて、当時の名鉄は方針転換。
そして、たった1両の“珍車”となってしまったのである。

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【2015年8月14日12時43分】 愛知県岡崎市・南公園交通広場

この電車、車内も開放されているのがありがたい。
運転台の計器類は枠しか残っていないし、座席シートも撤去済み(板張り化)だが
ピンクの内装は名鉄旧型車の証、そして、特徴的な連接部も観察し放題。
天井には、蛍光燈ではなく白熱灯。カバーまでよく残っている。

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【2015年8月14日12時43分】 愛知県岡崎市・南公園交通広場

運転台は、路面電車のように中央にある。かなり狭くて自分は...
奥にマスコンが鎮座しているが、でも、ブレーキハンドルが、これはもしや...

手前に見える手回し式のハンドルは、たぶんハンドブレーキのハンドル。
長らくの間、非常用ブレーキとして残されていたので、旧国鉄の車両などで
目にすることはあったが...、昭和48年までハンドブレーキ常用で運転された??

自分のみた資料の中には、そのあたりをハッキリ書いている本はなかったが、
それにしても、2車体連接車、満員で走っている雨の朝など...、
運転士さんがこのハンドルを回してブレーキをかけていたのか??
ちょっと見てみたい気も。

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【2015年8月14日12時45分】 愛知県岡崎市・南公園交通広場

そうそう、車体外観の緑色塗り潰しはおかしくはない。
名鉄といえば真っ赤な車体だが、そうなる前、緑色に塗られていた時期があった。

ちなみに、丸看板の「急」は揖斐線でも使われていた。多分、急行・忠節ゆきなどに
運用されることがあったかと。でも、電圧の違う名古屋本線に入るわけもなく、
「急行・岡崎ゆき」として走ったことは一度もなかったはず。

でも、<鉄>として「事実と違うじゃん!!」と怒りをあらわにしているだけではダメ。

あえて(強引に)、この車両が岡崎市内で保存される理由をこじつけるならば、
モ401が連節化改造を受ける前がモ110形、モ110形の数年後に増備されたのがモ120形、
非常によく似た車体の電車。こちらは、愛知県三河地方とも無縁ではない。

軍需工場があった愛知県豊川市への輸送のために、戦時中に急遽建設された豊川市内線、
その開業時に応援に入ったり、これも軍関係と思われるが、戦中から終戦直後の時期に
安城市を通る名鉄西尾線に貸し出されていたという経歴をもつ個体も。
その「同系車の改造車」と言うことにはなるので...

とはいえ、このモ401号車は一貫して揖斐線で活躍していたわけで...

サイズから考えても、珍しい連節構造という点も、保存するにはちょうど手頃な
車両だったと言うことだろうか。

まぁ、<変態鉄>としては大好きだった路線で、自分が生まれる前の時代に活躍した
車両をいまこうして見ることができるのを素直に喜んでいるわけだが。

……  ……

この広場には<鉄>として見ておくべき保存車があと2件。でも、あまりにも
記事が長くなりすぎたような気もするので、今日はこのへんで。(つづく)

(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。

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hanamura

「ブランドになった特急電車」(KOTSUライブラリ)という本で、
連接車について読んで、先日ロマンスカーに乗りました。
・・・って、理屈も感覚も、なんでも好きな私です。
by hanamura (2015-08-29 09:28) 

あるまーき

hanamuraさん

コメントありがとうございます。
特急列車のブランド化、ということでは、やはり、小田急が抜きんでている印象がありますね。ロマンスカーには自分は一度しか乗ったことがないもので、また、乗ってみたいと思います。
by あるまーき (2015-08-29 22:45) 

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