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25. ゆめのあと(本線・中滑川駅②) [探訪!! ちてつ百景]

この「探訪!! ちてつ百景」、地鉄沿線でビビビッときた光景をとりあえず撮ってきて
ネットや本で、歴史的なことなど背景を調べて、拙い文章にまとめる...
というプロセスを経て記事としてアップしている。

0Y6C3356.JPG
【2013年1月11日16時36分】 富山地鉄本線・越中三郷駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 80.0 mm 露出 F5.6 1/100秒 ISO200
プログラムAE AIフォーカスAF WB太陽光 三脚使用

撮ってから、すぐに記事にできるものもあるが、
「写真の撮り直しが必要」という理由以外でもアップまで時間がかかるものも。
この中滑川駅の歩んできた歴史も<にわか地鉄マニア>の自分、この足りないアタマで
理解できるはずもないくらい複雑だった。
……  ……

まず、昨日の1枚。

6_0Y6C5730.JPG
【2012年10月7日16時57分】 富山地鉄本線・中滑川駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 65.0 mm 露出 F4.5 1/25秒 +1段補正 ISO3200
プログラムAE AIフォーカスAF WBオート

この3番ホーム、レールは残されているが、電車が発着したことは1度もなかったはず。
幻の地鉄・海岸線の始発駅として準備されたものだった。

……  ……

1_0Y6C5704.JPG
【2012年10月7日16時46分】 富山地鉄本線・中滑川駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 85.0 mm 露出 F5.0 1/25秒 +1段補正 ISO400
プログラムAE AIフォーカスAF WBオート

「幻の3番ホーム」の全景は、向かい側の本線ホーム(もちろん現役)から
見ることができる。このカットは電鉄富山方から東向きにカメラを構えたもの。
ホームの手前に見える窓のある部分が、先の階段付近に相当する。

雑草に覆われ、錆び付いたレール。

2_0Y6C5705.JPG
【2012年10月7日16時46分】 富山地鉄本線・中滑川駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 65.0 mm 露出 F4.5 1/40秒 +1段補正 ISO400
プログラムAE AIフォーカスAF WBオート

駅の構内外れで途切れている。絶対に電車が来ることはないのに、
ご丁寧に古枕木で車止めがつくられていた。

この地鉄海岸線、聞き慣れない名前だが...
開業することなく消えていった、つまり未成線なのである。

0Y6C1106.JPG
【2012年6月25日17時00分】 富山ライトレール富山港線・富山駅北-インテック前
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 85.0 mm 露出 F5.0 1/80秒 ISO100
プログラムAE AIフォーカスAF WB太陽光

現在のポートラム(富山ライトレール線)はJR富山港線がもとになっているが、
この路線の起源は富岩(ふがん)鉄道という私鉄線。
だから、戦時統合では富山地方鉄道の一路線となり、地鉄富岩線として
歩み出すはずだった。しかし、沿線の軍需工場への輸送の関係もあって
戦時中、地鉄統合直後に国鉄に買収され、地鉄富岩線は国鉄富山港線となった。

地鉄も、戦中・戦後とたびたび国鉄に「富山港線払下げ」請願を提出しながらも、
対抗策として富山 - 岩瀬 - 中滑川と、上市経由の地鉄本線に対して、
水橋の集落を経て中滑川に至る地鉄海岸線の建設の手続きを進め、
中滑川側では一部用地取得も完了させた。その跡は今も残っている。

3_0Y6C5749.JPG
【2012年10月7日17時05分】 富山地鉄本線・中滑川駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 35.0 mm 露出 F5.0 1/50秒 +1段補正 ISO1600
プログラムAE AIフォーカスAF WBオート

車止めの先、用水路を跨ぐ部分には、明らかに線路を敷く準備がされているし、
こちら側だけ、不自然に広い空間ができた鉄道用地。
中滑川から西滑川付近まで本線と海岸線は並走する予定だったはず。

4_0Y6C5695.JPG
【2012年10月7日16時43分】 富山地鉄本線・中滑川駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 40.0 mm 露出 F4.0 1/30秒 +1段補正 ISO400
プログラムAE AIフォーカスAF WBオート

そして、従来からの地鉄本線(旧富山電鉄線)との合流点として
中滑川駅には海岸線用の3番ホームが準備された。

ただ、「海岸線計画」、そもそも実現への道は最初から険しいものだった。

岩瀬地区は富山市街の北側に位置する。でも、電鉄富山駅は繁華街のある富山駅の南側。
富山港線を返してもらうとしても、新たに海岸線を敷設するにしても、
地鉄にとって、どうやって北陸本線をオーバークロスするか、というのは大問題だった。
さらに、戦後、岩瀬地区も工業地帯として発展がはじまり、
また、経路上の区間も住宅地としての開発が始まると、用地取得ができるのか、
さらに富山から滑川に至るためには、絶対に、常願寺川に架橋する必要があり、
この工事ができるのか...、問題は山積だった。
工事の免許更新を繰り返し、最末期には常願寺川鉄橋は本線と共用とし、
越中三郷から分岐するルートに変更されていたという。そう、冒頭の写真の駅。

そして、モータリーゼションの進展で地鉄の経営にも徐々に翳りが見え始めると、
昭和40年台、それまで何度もの経路変更、工事免許の延長を繰り返してきた
地鉄海岸線の敷設は、事実上の白紙撤回となったのであった。

5_0Y6C5727.JPG
【2012年10月7日16時54分】 富山地鉄本線・中滑川駅(後追い)
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 300.0 mm 露出 F5.6 1/40秒 ISO400
プログラムAE AIフォーカスAF WBオート

そんな日の目を見ることなく消えていった地鉄海岸線の痕跡を探し回っていると、
電鉄富山に向かって14722編成が走り去っていった。
この線路の左側の空き地にそんな歴史があったなんて、知る人も殆どなかろう。

さて、ここでちょうとした謎が見つかった。

6_0Y6C5747.JPG
【2012年10月7日17時05分】 富山地鉄本線・中滑川駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 28.0 mm 露出 F7.1 1/125秒 +1段補正 ISO1600
プログラムAE AIフォーカスAF WBオート

写真左側の線路、本線のレールとしてこちらは現役だが、
このレールの位置と石積みのホームの位置関係が不自然なのだ。

7_0Y6C3257.JPG
【2013年1月11日12時43分】 富山地鉄本線・中滑川駅
<撮影データ>
Canon EOS 5D Mark III/EF28-300mm f/3.5-5.6L IS USM
焦点距離 60.0 mm 露出 F13.0 1/500秒 ISO200
プログラムAE AIフォーカスAF WB太陽光

よく見えない、という人のために...
積雪のある時期に取り直した“定点比較”の1枚も。
石積みホームの右側にコンクリート製のホームが“継ぎ足し”されている。なぜ??

……  ……

余談ながら、JR西日本から富山ライトレールに移管され、ヨーロピアンスタイルの
最新型の路面電車LRVが行き交うようになった富山港線、
そのライトレールの職員の多くは地鉄からの出向とのこと。
「戦時買収から60年余、地鉄が富岩鉄道の線路を、ようやく取り返した」
などという向きもあるとか...

「たら・れば」になってしまうが、戦後すぐの請願が通り、富岩線が地鉄に復帰、
その延伸として早期に海岸線が開業していれば、富山から岩瀬・中滑川まわりで
宇奈月ゆきというのが「地鉄本線」となっていたかも知れない。
もし、当初計画通りに開業していれば、現在のルートより線形が良かったとも
言われている。

(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。

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T_saga

早月加積駅の件に続いて、またネタ潰しにかかってしまいましたね。大変失礼いたしました。

富山にはこの他にも未成線が2つほどあり、富山市街から速星へ向かう予定だった路線や桜町から高岡・金沢を結ぶ予定だった高速鉄道もありました。後者は用地買収まで終わっていたので現在でも遺構を見る事ができます。興味などありましたら、いずれご案内いたしますね。
by T_saga (2013-02-13 08:45) 

あるまーき

T_sagaさん

コメントありがとうございます。また、前記事のコメントの件は全く気にしておりませんし、T_sagaさんのお話がなければ、地鉄海岸線なんて思いもしなかったわけで、感謝することはあってもネタ潰しなんて全く思っていません。速星線というのは聞いたことがあるようなないような...
近々、富山に参りますので、そのときにでも時間があれば、ぜひお話を聞かせていただけたらと思います。
by あるまーき (2013-02-13 22:27) 

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