秋深まる会津路へ(13)阿武隈急行線 [鉄分の濃い旅行記録]
鉄道路線の敷設というのは、その時代に応じて、いろいろな事情があって。
江戸時代以前の旧街道筋に沿って線路が敷かれた区間もあれば、土木上の制約や
その他の事情...“鉄道忌避伝説”などといわれる話が各地にあって。
旧市街地から大きく離れた、もともと“町外れ”だった場所に中心駅が設置されたり。
「蒸気機関車の煙で地元の農作物の育ちが悪くなる」とか
「旧街道沿いの宿場町の宿屋が困る」とか。それから「軍事上の理由」というのも。
特に海岸線に近い経路というのは長らく避けられる傾向にあった。
明治期以来、鉄道の敷設にあたっては誘致、忌避...いろいろなことがあって
その経路が決まっていって。
【2018年10月30日14時18分】 阿武隈急行線・保原駅
かつて、半世紀近く前まで福島を走っていた路面電車の経路に少し似た形で
福島市の郊外を走っているのが阿武隈急行線。
でも、この路線ももともとは...
…… ……
2018年10月30日(火)曇り一時雨
お目当ての保存車にも運良く巡り会えて。
【2018年10月30日13時54分】 阿武隈急行線・保原駅
行き交うクルマは多いものの活気を感じない保原の町を15分ほど歩けば、
阿武隈急行線の保原駅に到着するのである。
昨日の記事でご紹介したように、旧町役場があって中心街だったはずのところは
駅から徒歩15分ほど。逆に言えば、この駅周辺というのは本来、町外れだった
あたりになる。だからこそ...、だろうか。駅前の道路沿いには郊外型の、
広い駐車場を備えたドラッグストアなどが並んでおり。
洋館風のオシャレな駅舎に、広い駅前ロータリー。ハッキリ言って、ちょっと町の
規模に似つかわしくないくらいの立派な駅は、1面2線の高架駅である。
【2018年10月30日13時55分】 阿武隈急行線・保原駅
駅舎の入口にはこの横断幕。全線開業から30周年である。
そう、ちょうど昭和が平成に変わろうとしている頃に、福島と槻木...と言っても
<鉄>と地元の方以外にはわかりにくいだろうか。槻木というのは仙台から
東北本線で5つ目の駅。
いまも朝晩に仙台まで直通する運用が残されている。かつては、福島-郡山間も
直通運転していて、福島-卸町の5 km弱の区間は阿武隈急行線と東北本線の
“二重線籍”区間でもあり、その南北が東北本線に突き刺さるような線形が
阿武隈急行線の大きな特長でもある。
【2018年10月30日13時56分】 阿武隈急行線・保原駅
ホンモノのお姉さんに、あんなことしたり、こんなことしたり...
そういうのは人並み...いや、それ以上に大好きなのも<変態鉄>の“変態”たる所以。
でも、“二次元”とか“フィギュア”とかそういう方面には全く興味が無く。
とはいえ、とりあえず記念に撮ってみたのが改札前にある“鉄道むすめ”のボード。
♪ まるまる もりもり ~
という、かつてTVドラマで流行った歌をパクって...(※ もちろんウソです)
「丸森たかこ」と命名されたのだとか。“車掌”の肩書きはあるが、
いまの阿武隈急行線はワンマン運転が主流になっており。
本当は、この丸森というのは宮城県の南部、福島県との県境に近い町の名前。
もちろん阿武隈急行線にも丸森駅というのがあって。
<鉄>として、ふざけたことばかり書いていないで、ちょっと説明しておくと...
【2014年6月26日11時56分】 東北本線・長町駅
現在の阿武隈急行線というのは、かつて「日本鉄道」が東北本線を敷設する際に、
福島-仙台間のルートとして検討した中の1つだった。その名の通り、阿武隈川の
流域にある保原、梁川などを通って。でも、採用されたのは奥羽街道沿いの、
現在のルートだった。ただ、そのため急勾配が存在し、蒸気機関車時代には
東京から仙台以北を結ぶ優等列車は、比較的走りやすい常磐線経由で設定される
ことが多くなり。
戦後、再び、その阿武隈川沿いのルートに、東北本線の事実上の新線を建設して...
ということで建設が始まった。国鉄丸森線である。仙台側から福島との県境に
近い丸森まで開業したのだが...
国鉄の収支状況の悪化と、ちょうど折しも東北本線も電化・複線化が進められ。
東北本線が近代化されて電車特急が走り出せば、新線を建設する必要性も薄れ。
そう、県境近くの町までのびる単なる“盲腸線”となってしまった丸森線は...
【2018年4月29日8時27分】 いすみ鉄道・風そよぐ谷 国吉-新田野
旧国鉄木原線などと同様、国鉄再建法に基づき“特定地方交通線”に指定され。
ここも「自分たちでやる!!」と言ったのか、言わなかったのか...
第3セクター化されたのだった。だから、いすみ鉄道とは“同世代”。
ただ、ちょっと事情が違ったのは、この路線、丸森駅で“終わっていた”訳では
なかった。工事が凍結されるまでに既に、福島側の東北本線との合流点まで、
あと数百メートルという地点まで敷設工事が完了していたのだとか。
転換時には国鉄からキハ22形を借り入れて、白地に水色...まさに“年増の厚化粧”
のキハが走っていたが、転換から2年、1988年(昭和63年)に全線開業、
それに合わせて東北本線と合わせる形で交流電化も完成する。
(本当は、そう容易くはなかったようで...「東北の政商」の異名をとった、当時の福島交通グループのトップ、
“東京佐川急便事件”の登場人物でもある小針さんが 阿武隈急行線の福島側の延伸に強く反発したのである。
ちなみに<変態鉄>が通っている大学病院は、その小針さんが死の直前に入院していた病院である)
当初、東北本線のショートカット新線として建設されただけあって、施設は幹線級
の規格のものが用意されていて。第3セクターといっても異色の存在である。
地元自治体の出先機関...というか観光案内所が併設された立派な待合室を備えた
駅舎も電車を待つ人の姿は決して多くなく。暖房が効きすぎていて、<変態鉄>は
券売機前のベンチで、14時半の電車を待ったのである。
【2018年10月30日14時16分】 阿武隈急行線・保原駅
窓口には駅員さんが2人常駐していて。マイク放送で上り列車の接近を告げたところで
ベンチから立ち上がって通路を通り、階段を上がって高架ホームへ。
接続する形でコミュニティバス路線も到着したようで、改札を通ったのは10名ほど
だっただろうか。
「下りには試運転列車が...」のアナウンスにテンションが上がってしまうのは
<鉄>の性(さが)かも知れない。
でも、慌ててしまったために小銭入れをベンチに置き忘れてしまったみたいで。
駅員さんがホームまで追いかけてきてくれた。いやはや、恥ずかしい限り。
【2018年10月30日14時18分】 阿武隈急行線・保原駅
14:28発の福島ゆき第934M列車の直前、下りホームへと進入してきたのは
青いラッピング電車。実は14時前、保原駅へと戻ってくる寸前に、上りホームを
発車していくこの電車を見ていた。福島から保原に来るときも瀬上駅ですれ違った
のは、この電車で間違いなさそうで。「試運転」表示のまま何往復もしているの
だろうか。
【2018年10月30日14時20分】 阿武隈急行線・保原駅
このラッピング電車、近くで見ると「伊達なトレインプロジェクト」の文字。
何でも、アニメ番組とのコラボ企画のようで。
<変態鉄>が乗り込むのは、反対側のホームに到着した福島ゆき。
ワンマン運転なので2両目は比較的余裕があって。
その車窓...
【2018年10月30日14時20分】 阿武隈急行線・第934M列車(AT8118号車内)
まさにその瀬上駅付近では線路付近まで一面に広がるリンゴ。
赤々と実っているのが、車窓からでもハッキリ分かるくらいで。
【2018年10月30日14時44分】 阿武隈急行線・福島駅
ぼんやり、そんな車窓を眺めていたら、まもなく福島駅に到着。
阿武隈急行線の奥に見えているのは東北本線の福島駅、そして、同じホームの
反対側に発着するのは福島交通飯坂線である。
【2018年10月30日14時46分】 阿武隈急行線・福島駅
改札も共用になっていて。
ちょっと不思議な構造になった駅なのである。
こういう改札ラッチの向こうに電車が発着する光景、これぞ私鉄のターミナルと
いった感じだが、最近はめっきり見かけなくなった気がする。
と言いつつ、その駅の様子をじっくり観察する余裕もなく、ちょっと寄り道へ。
その話題は、また後日、ご紹介したい。(つづく)
(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。
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江戸時代以前の旧街道筋に沿って線路が敷かれた区間もあれば、土木上の制約や
その他の事情...“鉄道忌避伝説”などといわれる話が各地にあって。
旧市街地から大きく離れた、もともと“町外れ”だった場所に中心駅が設置されたり。
「蒸気機関車の煙で地元の農作物の育ちが悪くなる」とか
「旧街道沿いの宿場町の宿屋が困る」とか。それから「軍事上の理由」というのも。
特に海岸線に近い経路というのは長らく避けられる傾向にあった。
明治期以来、鉄道の敷設にあたっては誘致、忌避...いろいろなことがあって
その経路が決まっていって。
【2018年10月30日14時18分】 阿武隈急行線・保原駅
かつて、半世紀近く前まで福島を走っていた路面電車の経路に少し似た形で
福島市の郊外を走っているのが阿武隈急行線。
でも、この路線ももともとは...
…… ……
2018年10月30日(火)曇り一時雨
お目当ての保存車にも運良く巡り会えて。
【2018年10月30日13時54分】 阿武隈急行線・保原駅
行き交うクルマは多いものの活気を感じない保原の町を15分ほど歩けば、
阿武隈急行線の保原駅に到着するのである。
昨日の記事でご紹介したように、旧町役場があって中心街だったはずのところは
駅から徒歩15分ほど。逆に言えば、この駅周辺というのは本来、町外れだった
あたりになる。だからこそ...、だろうか。駅前の道路沿いには郊外型の、
広い駐車場を備えたドラッグストアなどが並んでおり。
洋館風のオシャレな駅舎に、広い駅前ロータリー。ハッキリ言って、ちょっと町の
規模に似つかわしくないくらいの立派な駅は、1面2線の高架駅である。
【2018年10月30日13時55分】 阿武隈急行線・保原駅
駅舎の入口にはこの横断幕。全線開業から30周年である。
そう、ちょうど昭和が平成に変わろうとしている頃に、福島と槻木...と言っても
<鉄>と地元の方以外にはわかりにくいだろうか。槻木というのは仙台から
東北本線で5つ目の駅。
いまも朝晩に仙台まで直通する運用が残されている。かつては、福島-郡山間も
直通運転していて、福島-卸町の5 km弱の区間は阿武隈急行線と東北本線の
“二重線籍”区間でもあり、その南北が東北本線に突き刺さるような線形が
阿武隈急行線の大きな特長でもある。
【2018年10月30日13時56分】 阿武隈急行線・保原駅
ホンモノのお姉さんに、あんなことしたり、こんなことしたり...
そういうのは人並み...いや、それ以上に大好きなのも<変態鉄>の“変態”たる所以。
でも、“二次元”とか“フィギュア”とかそういう方面には全く興味が無く。
とはいえ、とりあえず記念に撮ってみたのが改札前にある“鉄道むすめ”のボード。
♪ まるまる もりもり ~
という、かつてTVドラマで流行った歌をパクって...(※ もちろんウソです)
「丸森たかこ」と命名されたのだとか。“車掌”の肩書きはあるが、
いまの阿武隈急行線はワンマン運転が主流になっており。
本当は、この丸森というのは宮城県の南部、福島県との県境に近い町の名前。
もちろん阿武隈急行線にも丸森駅というのがあって。
<鉄>として、ふざけたことばかり書いていないで、ちょっと説明しておくと...
【2014年6月26日11時56分】 東北本線・長町駅
現在の阿武隈急行線というのは、かつて「日本鉄道」が東北本線を敷設する際に、
福島-仙台間のルートとして検討した中の1つだった。その名の通り、阿武隈川の
流域にある保原、梁川などを通って。でも、採用されたのは奥羽街道沿いの、
現在のルートだった。ただ、そのため急勾配が存在し、蒸気機関車時代には
東京から仙台以北を結ぶ優等列車は、比較的走りやすい常磐線経由で設定される
ことが多くなり。
戦後、再び、その阿武隈川沿いのルートに、東北本線の事実上の新線を建設して...
ということで建設が始まった。国鉄丸森線である。仙台側から福島との県境に
近い丸森まで開業したのだが...
国鉄の収支状況の悪化と、ちょうど折しも東北本線も電化・複線化が進められ。
東北本線が近代化されて電車特急が走り出せば、新線を建設する必要性も薄れ。
そう、県境近くの町までのびる単なる“盲腸線”となってしまった丸森線は...
【2018年4月29日8時27分】 いすみ鉄道・風そよぐ谷 国吉-新田野
旧国鉄木原線などと同様、国鉄再建法に基づき“特定地方交通線”に指定され。
ここも「自分たちでやる!!」と言ったのか、言わなかったのか...
第3セクター化されたのだった。だから、いすみ鉄道とは“同世代”。
ただ、ちょっと事情が違ったのは、この路線、丸森駅で“終わっていた”訳では
なかった。工事が凍結されるまでに既に、福島側の東北本線との合流点まで、
あと数百メートルという地点まで敷設工事が完了していたのだとか。
転換時には国鉄からキハ22形を借り入れて、白地に水色...まさに“年増の厚化粧”
のキハが走っていたが、転換から2年、1988年(昭和63年)に全線開業、
それに合わせて東北本線と合わせる形で交流電化も完成する。
(本当は、そう容易くはなかったようで...「東北の政商」の異名をとった、当時の福島交通グループのトップ、
“東京佐川急便事件”の登場人物でもある小針さんが 阿武隈急行線の福島側の延伸に強く反発したのである。
ちなみに<変態鉄>が通っている大学病院は、その小針さんが死の直前に入院していた病院である)
当初、東北本線のショートカット新線として建設されただけあって、施設は幹線級
の規格のものが用意されていて。第3セクターといっても異色の存在である。
地元自治体の出先機関...というか観光案内所が併設された立派な待合室を備えた
駅舎も電車を待つ人の姿は決して多くなく。暖房が効きすぎていて、<変態鉄>は
券売機前のベンチで、14時半の電車を待ったのである。
【2018年10月30日14時16分】 阿武隈急行線・保原駅
窓口には駅員さんが2人常駐していて。マイク放送で上り列車の接近を告げたところで
ベンチから立ち上がって通路を通り、階段を上がって高架ホームへ。
接続する形でコミュニティバス路線も到着したようで、改札を通ったのは10名ほど
だっただろうか。
「下りには試運転列車が...」のアナウンスにテンションが上がってしまうのは
<鉄>の性(さが)かも知れない。
でも、慌ててしまったために小銭入れをベンチに置き忘れてしまったみたいで。
駅員さんがホームまで追いかけてきてくれた。いやはや、恥ずかしい限り。
【2018年10月30日14時18分】 阿武隈急行線・保原駅
14:28発の福島ゆき第934M列車の直前、下りホームへと進入してきたのは
青いラッピング電車。実は14時前、保原駅へと戻ってくる寸前に、上りホームを
発車していくこの電車を見ていた。福島から保原に来るときも瀬上駅ですれ違った
のは、この電車で間違いなさそうで。「試運転」表示のまま何往復もしているの
だろうか。
【2018年10月30日14時20分】 阿武隈急行線・保原駅
このラッピング電車、近くで見ると「伊達なトレインプロジェクト」の文字。
何でも、アニメ番組とのコラボ企画のようで。
<変態鉄>が乗り込むのは、反対側のホームに到着した福島ゆき。
ワンマン運転なので2両目は比較的余裕があって。
その車窓...
【2018年10月30日14時20分】 阿武隈急行線・第934M列車(AT8118号車内)
まさにその瀬上駅付近では線路付近まで一面に広がるリンゴ。
赤々と実っているのが、車窓からでもハッキリ分かるくらいで。
【2018年10月30日14時44分】 阿武隈急行線・福島駅
ぼんやり、そんな車窓を眺めていたら、まもなく福島駅に到着。
阿武隈急行線の奥に見えているのは東北本線の福島駅、そして、同じホームの
反対側に発着するのは福島交通飯坂線である。
【2018年10月30日14時46分】 阿武隈急行線・福島駅
改札も共用になっていて。
ちょっと不思議な構造になった駅なのである。
こういう改札ラッチの向こうに電車が発着する光景、これぞ私鉄のターミナルと
いった感じだが、最近はめっきり見かけなくなった気がする。
と言いつつ、その駅の様子をじっくり観察する余裕もなく、ちょっと寄り道へ。
その話題は、また後日、ご紹介したい。(つづく)
(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。
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鉄道むすめ!良いではありませんか!良いではありませんか!
乗務中のリアル鉄道むすめ様には勝手に話しかけられませんが
各社で設定のあるアテンダント様には話しかけるの大好き!
by hanamura (2018-11-21 10:05)
hanamuraさん
コメントありがとうございます。
この記事に言葉足らずな部分があって不快にさせたとしたら、ごめんなさい。別に「鉄道むすめ」に対して否定的な見方をしているというわけではありませんので...
アテンダントさんは各社で増えていく傾向にありますね。
いろいろ、沿線のお話を聞かせてもらったり、記念写真をお願いしたり...、自分にとって<乗り鉄>の楽しみの1つになっています。
by ferrum_queserasera (2018-11-21 10:46)
たしかに、
まるまる、もりもり、丸森線ね!
あぶ急、あぶ急、ピポピポ~!はないか。
by skekhtehuacso (2018-11-21 22:21)
skekhtehuacso さん
コメントありがとうございます。
♪ ツルツル テカテカ
って感じではないですよね。
失礼しました。
by ferrum_queserasera (2018-11-21 23:29)