秋深まる会津路へ(11)保原の町の路面電車を... <前編> [保存車・廃線跡]
福島市周辺で路線バスを運行しており、高速バスで県内外まで...
ベージュ色に赤と紺色のラインが入ったバスを運行しているのが「福島交通」。
その福島交通、いまではバスが中心だが、福島と飯坂温泉を結ぶローカル私鉄でも
あって。東急から譲渡されたステンレス電車たちが活躍している。
でも、いまから半世紀くらい前まで、ちょうど<変態鉄>が生まれる10年ほど前...
というよりも“大阪で万博があった頃”といった方がわかりやすいだろうか??
福島駅から郊外に向けて路面電車の線路網。それも福島交通の路線だった。
1067 mm軌間ではあったが、昭和初期にナローから改軌したというだけあって、
“馬面電車”と呼ぶに相応しい狭隘な車体、“アサガオ連結器”を介して
電車が貨車を牽いて...、福島の道路の片隅を電車が走っていたという。
【2018年10月30日13時30分】 福島県伊達市保原町字宮下付近
その当時の写真、拙ブログにも時折、コメントを頂戴する Cedarさん(→ こちら)
の記事に、単に車両や鉄道施設の記録ではなく、その時代の“空気感”が伝わって
くるような写真がたくさん載っていて。
「こういうのが撮りたかったのに...」と思いながら、写真を眺めるだけ。
廃線後、何両かの車両が保存されたが、すでに廃線から半世紀が近くになっており、
それらの保存車も酷く荒廃している...ということを数年前に聞いていた。
その中の1両、1116号車について、ボランティアも加わり、修復作業が始まったという
話は知っていたのだが...
そう、そこにあの大震災。もちろん、それどころの状況では無かったはず。
「保存会」のウェブサイトも、いつしか更新が完全に停止した状態になってしまって。
でも、最近、その1116号車の修復が完了し、外観の見学ならいつでもできる状況に
なっていることを知ったのだった。
ということで、その現役時代を知るよしもない<変態鉄>だが、その頃の車両が
修復、保存されていると聞けば...
そう、「只見線を撮りに行く」が“サブ”だった。今回の旅の第1のキッカケは
この1116号車の姿をこの目で見に行くことにあった。
…… ……
2018年10月30日(火)曇り一時雨
高速バスで福島駅に着いたのは12:25頃。その東口駅前広場の一角に、ちょっと
懐かしい感じのする、薄暗い通路があって...
【2018年10月30日12時24分】 福島県福島市栄町・福島駅東口
その先にあるのが、阿武隈急行線の乗り場。
さっそく自動券売機できっぷを買って改札を通ると...
【2018年10月30日12時25分】 阿武隈急行線・福島駅
12:34発の富田ゆき、第925M列車がまもなく発車するタイミング。
ホームでのスナップもほどほどに乗り込むのである。
車内は比較的空いていて。
【2018年10月30日12時32分】 阿武隈急行線・第925M列車(AT8106号車内)
車内を見回してみると、2両編成の連結面は(ちょっと断面が小さいのだが...)
かつての営団地下鉄の電車を思い出させるような、キノコ型断面の通路。
でも、4人掛けボックスシートもそう、走行音なども国鉄型の電車そのもの。
福島駅を発車すると、最初の停車駅・卸町駅までが非常に離れていて。
そう、卸町駅の直前まで電車は東北本線の線路上を走るのである。東北本線から
分岐すると、何というのだろうか、車窓は郊外の住宅街から徐々に民家が少なく
なってきて。田園地帯ではなくて果樹園が一面に広がり始めるのである。
途中の...たぶん、瀬上駅だったと思うのだが、どハデなラッピングを施された
電車が「試運転」の表示で停車しているのと交換。
【2018年10月30日12時48分】 阿武隈急行線・保原駅(後追い)
福島駅から20分ほどで、保原駅に到着したのだった。
駅は1面2線の高架ホーム。雨が降り出しそうな天気だったから...ということも
もしかしたら、ちょっとあるのかも知れないが、でも、何だか寒々した感じ。
駅前はとても立派なロータリーがあるのだが、人もクルマも疎らで...
そう、「駅前」と言っても保原の町の中心は、駅から1 kmほど離れたあたりに
あるようで。駅前にあった地図を参考に、何だかそれっぽい方向へと歩けば、
駅前広場を過ぎると、いかにも「昔ながらの街道沿いの街」といった雰囲気に。
時代物の看板が残っていたり、狭い街路の両側に“しもた屋”風の家並みが...
でも...
たった1両の保存車を探しに来たのだが...
事前のリサーチでは「かつての軌道線の保原駅があった付近に展示されている」と、
「軌道線の保原駅は、現在は同じ福島交通の路線バスの発着所になっている」という
2つの情報しか見つけていなかった。
駅前の地図に、どうやら福島交通バスのバスターミナル...と思しき表記を発見。
とりあえず、そちらの方角に向かってきたつもりだが...。
「たぶん、このあたりが街の中心部だろうなぁ...」と思われる場所までは
たどり着いたのだが...。
こうなると、だんだんイライラしてくるのが<変態鉄>の性格。でも、誰にも
怒りをぶつけることもできないし、まず第一に、道を歩いている人がほとどんど無く。
誰か地元の方に尋ねることもできなさそうで。
「こりゃ、もしかしたら“空振り”かぁ!?」
そんな気持ちになり始めたとき。ちょっとした塀とかフェンスのところに周辺の
お店などを描いた地図が掲げられていることがあるが、やはり、ここの街でも。
その中に、ぬぁんと...
「駅前食堂」という文字があるではないか!!!
阿武急の「保原駅」からは1 kmほど離れた場所。他に鉄道路線はなく「駅前」は
完全なウソである...とは言い過ぎ。そう、駅が廃止になって駅前食堂が...
【2018年10月30日13時02分】 福島県伊達市保原町付近
阿武急の保原駅から歩いてきた道は、国道399号線との交差点に。
ここを左折するとほどなく、正面左手に、何だか低いプラットホームのような
ものが見えてきたのである。
確かに福島交通のバス停のポールが立っていて、「保原バスセンター」という表示。
【2018年10月30日13時02分】 福島県伊達市保原町付近
国道に面して、その傍らに簡素な駅舎のようなものと...
そう、ここに路面電車の電停...というか、駅があったことが伺える構造である。
片側1車線だろうか、国道とは名ばかりの道路の端に単線の線路が伸びていて、
保原駅は道路の外側にもう1本線路があって、ちょうど島式ホーム1面という配置
だったのだろうか。
【2018年10月30日13時32分】 福島県伊達市保原町字宮下付近
後ほど撮影した、保存車の説明看板に掲載されていた写真。何だか面影を感じる
ことができるような...
バス乗り場の前でそのまま振り返って道路の反対側を見てみれば...
【2018年10月30日13時03分】 福島県伊達市保原町付近
廃線からまもなく半世紀、あの震災も乗り越えて、「駅前食堂」は暖簾がかかって
いるので、たぶん盛業中。それにしてもラーメンと「飯類」という言い方が、
何だか時代を感じさせるような。
この写真でも奥の方に交差点の信号機が見えているが...
【2018年10月30日13時26分】 福島県伊達市保原町字宮下付近
その付近が保原の市街地の中心部にあたるような...
先ほどの「かつての軌道線の保原駅があった付近に展示されている」という情報は
複数のサイトで確認できたので、間違いないかと。でも、知らない土地で“付近”を
探すのは大変。まずは、可能性の高い場所として交差点の方...町の中心へと
向かってみることにした。
(そうすれば、地元の方に尋ねることができるチャンスも増えるはず...)
静態保存車探しも、なかなか一筋縄にはいかないわけで。
交差点の先は歩道が広くなっていて。体育館とか公民館とか...
そのとなりが旧町役場(保原町も市町村合併で伊達市の一部になっている)。
いまの写真、歩道を撮っただけに見えるのだが、よ~~~~く見てみれば...。
その場所へと急ぐ<変態鉄>だったのである。(つづく)
…… ……
最後の写真。分からなかった人のために、もう一度。
ここにチラッと見えたのを見逃さなかったのである。
(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。
あなたの「ポチッ!」こそが、励みになります。あっ、あと、「nice!」も。
にほんブログ村
ベージュ色に赤と紺色のラインが入ったバスを運行しているのが「福島交通」。
その福島交通、いまではバスが中心だが、福島と飯坂温泉を結ぶローカル私鉄でも
あって。東急から譲渡されたステンレス電車たちが活躍している。
でも、いまから半世紀くらい前まで、ちょうど<変態鉄>が生まれる10年ほど前...
というよりも“大阪で万博があった頃”といった方がわかりやすいだろうか??
福島駅から郊外に向けて路面電車の線路網。それも福島交通の路線だった。
1067 mm軌間ではあったが、昭和初期にナローから改軌したというだけあって、
“馬面電車”と呼ぶに相応しい狭隘な車体、“アサガオ連結器”を介して
電車が貨車を牽いて...、福島の道路の片隅を電車が走っていたという。
【2018年10月30日13時30分】 福島県伊達市保原町字宮下付近
その当時の写真、拙ブログにも時折、コメントを頂戴する Cedarさん(→ こちら)
の記事に、単に車両や鉄道施設の記録ではなく、その時代の“空気感”が伝わって
くるような写真がたくさん載っていて。
「こういうのが撮りたかったのに...」と思いながら、写真を眺めるだけ。
廃線後、何両かの車両が保存されたが、すでに廃線から半世紀が近くになっており、
それらの保存車も酷く荒廃している...ということを数年前に聞いていた。
その中の1両、1116号車について、ボランティアも加わり、修復作業が始まったという
話は知っていたのだが...
そう、そこにあの大震災。もちろん、それどころの状況では無かったはず。
「保存会」のウェブサイトも、いつしか更新が完全に停止した状態になってしまって。
でも、最近、その1116号車の修復が完了し、外観の見学ならいつでもできる状況に
なっていることを知ったのだった。
ということで、その現役時代を知るよしもない<変態鉄>だが、その頃の車両が
修復、保存されていると聞けば...
そう、「只見線を撮りに行く」が“サブ”だった。今回の旅の第1のキッカケは
この1116号車の姿をこの目で見に行くことにあった。
…… ……
2018年10月30日(火)曇り一時雨
高速バスで福島駅に着いたのは12:25頃。その東口駅前広場の一角に、ちょっと
懐かしい感じのする、薄暗い通路があって...
【2018年10月30日12時24分】 福島県福島市栄町・福島駅東口
その先にあるのが、阿武隈急行線の乗り場。
さっそく自動券売機できっぷを買って改札を通ると...
【2018年10月30日12時25分】 阿武隈急行線・福島駅
12:34発の富田ゆき、第925M列車がまもなく発車するタイミング。
ホームでのスナップもほどほどに乗り込むのである。
車内は比較的空いていて。
【2018年10月30日12時32分】 阿武隈急行線・第925M列車(AT8106号車内)
車内を見回してみると、2両編成の連結面は(ちょっと断面が小さいのだが...)
かつての営団地下鉄の電車を思い出させるような、キノコ型断面の通路。
でも、4人掛けボックスシートもそう、走行音なども国鉄型の電車そのもの。
福島駅を発車すると、最初の停車駅・卸町駅までが非常に離れていて。
そう、卸町駅の直前まで電車は東北本線の線路上を走るのである。東北本線から
分岐すると、何というのだろうか、車窓は郊外の住宅街から徐々に民家が少なく
なってきて。田園地帯ではなくて果樹園が一面に広がり始めるのである。
途中の...たぶん、瀬上駅だったと思うのだが、どハデなラッピングを施された
電車が「試運転」の表示で停車しているのと交換。
【2018年10月30日12時48分】 阿武隈急行線・保原駅(後追い)
福島駅から20分ほどで、保原駅に到着したのだった。
駅は1面2線の高架ホーム。雨が降り出しそうな天気だったから...ということも
もしかしたら、ちょっとあるのかも知れないが、でも、何だか寒々した感じ。
駅前はとても立派なロータリーがあるのだが、人もクルマも疎らで...
そう、「駅前」と言っても保原の町の中心は、駅から1 kmほど離れたあたりに
あるようで。駅前にあった地図を参考に、何だかそれっぽい方向へと歩けば、
駅前広場を過ぎると、いかにも「昔ながらの街道沿いの街」といった雰囲気に。
時代物の看板が残っていたり、狭い街路の両側に“しもた屋”風の家並みが...
でも...
たった1両の保存車を探しに来たのだが...
事前のリサーチでは「かつての軌道線の保原駅があった付近に展示されている」と、
「軌道線の保原駅は、現在は同じ福島交通の路線バスの発着所になっている」という
2つの情報しか見つけていなかった。
駅前の地図に、どうやら福島交通バスのバスターミナル...と思しき表記を発見。
とりあえず、そちらの方角に向かってきたつもりだが...。
「たぶん、このあたりが街の中心部だろうなぁ...」と思われる場所までは
たどり着いたのだが...。
こうなると、だんだんイライラしてくるのが<変態鉄>の性格。でも、誰にも
怒りをぶつけることもできないし、まず第一に、道を歩いている人がほとどんど無く。
誰か地元の方に尋ねることもできなさそうで。
「こりゃ、もしかしたら“空振り”かぁ!?」
そんな気持ちになり始めたとき。ちょっとした塀とかフェンスのところに周辺の
お店などを描いた地図が掲げられていることがあるが、やはり、ここの街でも。
その中に、ぬぁんと...
「駅前食堂」という文字があるではないか!!!
阿武急の「保原駅」からは1 kmほど離れた場所。他に鉄道路線はなく「駅前」は
完全なウソである...とは言い過ぎ。そう、駅が廃止になって駅前食堂が...
【2018年10月30日13時02分】 福島県伊達市保原町付近
阿武急の保原駅から歩いてきた道は、国道399号線との交差点に。
ここを左折するとほどなく、正面左手に、何だか低いプラットホームのような
ものが見えてきたのである。
確かに福島交通のバス停のポールが立っていて、「保原バスセンター」という表示。
【2018年10月30日13時02分】 福島県伊達市保原町付近
国道に面して、その傍らに簡素な駅舎のようなものと...
そう、ここに路面電車の電停...というか、駅があったことが伺える構造である。
片側1車線だろうか、国道とは名ばかりの道路の端に単線の線路が伸びていて、
保原駅は道路の外側にもう1本線路があって、ちょうど島式ホーム1面という配置
だったのだろうか。
【2018年10月30日13時32分】 福島県伊達市保原町字宮下付近
後ほど撮影した、保存車の説明看板に掲載されていた写真。何だか面影を感じる
ことができるような...
バス乗り場の前でそのまま振り返って道路の反対側を見てみれば...
【2018年10月30日13時03分】 福島県伊達市保原町付近
廃線からまもなく半世紀、あの震災も乗り越えて、「駅前食堂」は暖簾がかかって
いるので、たぶん盛業中。それにしてもラーメンと「飯類」という言い方が、
何だか時代を感じさせるような。
この写真でも奥の方に交差点の信号機が見えているが...
【2018年10月30日13時26分】 福島県伊達市保原町字宮下付近
その付近が保原の市街地の中心部にあたるような...
先ほどの「かつての軌道線の保原駅があった付近に展示されている」という情報は
複数のサイトで確認できたので、間違いないかと。でも、知らない土地で“付近”を
探すのは大変。まずは、可能性の高い場所として交差点の方...町の中心へと
向かってみることにした。
(そうすれば、地元の方に尋ねることができるチャンスも増えるはず...)
静態保存車探しも、なかなか一筋縄にはいかないわけで。
交差点の先は歩道が広くなっていて。体育館とか公民館とか...
そのとなりが旧町役場(保原町も市町村合併で伊達市の一部になっている)。
いまの写真、歩道を撮っただけに見えるのだが、よ~~~~く見てみれば...。
その場所へと急ぐ<変態鉄>だったのである。(つづく)
…… ……
最後の写真。分からなかった人のために、もう一度。
ここにチラッと見えたのを見逃さなかったのである。
(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。
あなたの「ポチッ!」こそが、励みになります。あっ、あと、「nice!」も。
にほんブログ村
保原の駅舎は屋根などが改築されてますが、確かに昔のものですね、街並みの記憶が無いのが残念です。
保原のブログ記事はこちらです→https://cedarben.blog.so-net.ne.jp/2010-11-20
by Cedar (2018-11-20 00:35)
Cedarさん
コメントありがとうございます。
福島交通のバス待合室に転用されて、長くその姿を留めていた
駅舎は他にもあったようですが、さすがに建替が進んだようで。
でも、このバス乗り場の雰囲気に、かつて狭い道路の片隅を
走っていたであろう、軌道の、その雰囲気をかすかに感じ取る
ことができたように思います。
記事も拝見させていただきました。
確かに、周囲に面影は...、でも、街中は人通りもなければ
開いているお店も少なく、寂しい限りでした。
(尤も、最近は地方の街はどこもそうですが...)
by ferrum_queserasera (2018-11-20 01:55)