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秋深まる会津路へ(5)霧と雲、そして雨。<前編> [会津・越後のキハ[只見・磐越西線]]

何気ないシーンが気になる、というのは、たぶん多くの人が経験していること
ではないかと思う。

10月28日、郡山からの電車で会津若松に到着したとき、隣のホームに「四季島」が
停まっていたことは既にご紹介した通りだが、頭端式ホームの車止めの先にある通路
窓を開けてEOSくんを構えて、シャッターチャンスを窺っていたときだった。

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【2018年10月28日10時53分】 磐越西線・会津若松駅

「四季島」の乗務員、他の列車の乗務員とはデザインの異なる専用の制服を着て、
白い手袋、そんな乗務員が窓を拭き始めたのである。

いや、長時間停車の駅で運転士さんが窓を拭いているシーンは珍しくない。
あの(?)、京王線新宿駅でも下り方先端部で、発車前に窓拭きしている運転士さんは
フツーに見かける。

でも...

磐越西線は会津若松駅でスイッチバック、進行方向が変わるので車止め側は、
この先、列車の最後部になるはず。そう、運転士さんの視界確保のためなら、
こちら側のフロントガラスを拭くことは無いのである。

そういうところにクルーズ列車の、その乗務員の、ある種の矜持のようなものを
感じずにはいられなかったのである。

さて、その会津若松駅からのびる只見線が今回のお目当ての路線。でも...嗚呼。

……  ……

2018年10月29日(月)曇り一時雨

目覚めたのは朝4時半過ぎ。前夜、近くのスーパーで買ったサラダとおにぎりで
簡単な朝食を済ませれば、まだ人通りも疎らなバス通りを。10月末、朝5時半の
会津若松は非常に寒かったが...

徒歩15分ほどで会津若松駅に到着。あまり人とすれ違うことも無く。真っ暗な中に
駅舎の灯りが煌々と...

朝早い旅行客と、大きなバッグを背負った登山客、それから部活だろうか、
高校生たち。駅構内は、もちろん昼間ほどでは無くても寂しい感じでは無かった。

駅構内の配線上の理由で、改札口から見て一番奥のホームが只見線と会津鉄道線。
そのホームに向かえば...

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【2018年10月29日5時38分】 只見線・会津若松駅

初発になる、キハ2連の会津川口ゆきはすでに入線しており。
“叱られるか!?”と、ちょっとヒヤヒヤしながら素早く三脚をセットして。
6:00発の第423D列車は、会津若松のキハ40形2両編成。通学列車の性格も持っている
ようだが、早くから乗り込んでいたのは山へ向かうと思しき装備の中高年グループが
中心だっただろうか。

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【2018年10月29日5時50分】  只見線・第423D列車(キハ40 502車内)

半分くらいのボックスが埋まったところで発車時刻。まもなく日の出を迎える時刻、
車窓は少しずつ沿線の建物が見え始め...てくるはずだったのだが。

会津若松駅というのは、城下町の北のハズレに近い位置にある。
只見線で1つ目の、七日町、そして西若松の方が市街地中心部にあたる。
両駅で高校の制服を着た男女がまとまった数、乗車して。一気に混雑した
通学列車へと変貌したのだが...。

参ったのは車窓。七日町駅付近は住宅密集地、線路端まで建て込んだ軒先を掠める
ように走る区間だが、車窓は真っ白。そう、霧である。
西若松駅を出たら列車は西へと進路を変え、阿賀川鉄橋を渡って田園地帯へ入る。
会津本郷、会津高田と一面の田園地帯を走るはず...だが。

どこまで行っても車窓は真っ白。撮影地の“ロケハン”も兼ねて線路周りの様子を
確認したかったのだが、線路端の様子さえ、ほとんど見ることができないくらいの
濃霧だったのである。

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【2018年10月29日6時19分】  只見線・会津高田駅

霧は濃くなったり薄くなったりを繰り返しながら、でも、相変わらず...
多くの高校生が待っている会津高田駅のホームへと停まったのだった。

車掌さんに乗車券を渡して。とりあえずスナップ。
このまま霧は晴れて行ってくれるのだろうか!?

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【2018年10月29日6時19分】  只見線・会津高田駅

いまでは棒線式1面1線の簡素な無人駅だが、反対側には使われなくなって
荒れるに任せたホームが残っており、かつては、交換可能駅だったことを伺わせ、
長い間、タブレット閉塞だった只見線、この駅にもかつては駅員さんがいたはず。

無人化後に待合室だけの簡素な駅舎に改装されたのだろうか?!
ジュースの自販機があるだけ。この写真の右方に“無人駅標準仕様”の公衆トイレ。
(実は、意外にも、これが洋式でホッとしたのだった。)

それにしても...

できるだけ線路から離れないように、歩いて撮影できる場所を探したが...

初訪問に濃霧、最悪の条件が重なって、どこに線路があるのかもよく分からず。
漸く、根岸側の踏切までやって来たがカメラを構えられそうな場所は無く。

定期的にSL列車が運転される磐越西線は線路端がキレイに除草されている区間が
多かったが、只見線の線路回りは、場所によっては背丈ほどもありそうな雑草...
というか枯れ草。

贅沢を言っているのではなく、まもなくやって来るキハの上り列車の姿を
とりあえず記録できる場所を探していたのだが...。

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【2018年10月29日6時43分】  只見線・会津高田-会津本郷

霧は短い周期で濃くなったり薄くなったりを繰り返してはいたものの、時には
数メートル先が見えないくらいになって。歩道も車道も無い、細い生活道路。

360度、真っ白な中から突如として現れる白いカタマリ。地元の方にとっては
霧の朝に慣れているのだろうか!? 軽トラだった。白い軽トラがヘッドライトも
付けずに、突如、目の前に迫っているのである。高田駅の前を通って会津本郷側へ。

たぶん、実質的には200~300 mだったのだろうが、真っ白の中では、かなり長い
距離を歩いたような気がした。少し広い道路が只見線の線路と交差する踏切。
踏切カブリツキで、何とか、キハを正面がちに撮ることならできそうな...

只見線のキハは、基本的に頻繁にタイフォンを鳴らすようで...。
通過時刻のかなり前から音だけは聞こえてくるのだが。

いよいよ!!

踏切機が鳴り出して、会津高田駅を出発するキハのエンジン音が聞こえてきて。

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【2018年10月29日6時54分】  只見線・会津高田-会津本郷

前夜、最終列車で会津川口駅に到着したキハが滞泊して、朝一番の通学列車で
戻ってくるという運用。通学列車に相応しく、こちらはキハ40形の4両編成。
本線系でも短編成化が進む時代、キハの4連というのも、珍しい存在になりつつ。

……  ……

さて、無知とは怖いもの。この記事を書くのにあたって気象台のウェブサイトを
見てみたら、ちゃんと書いてあった。10月~11月にかけての会津地方の傾向として
晴れた朝には霧が出やすいとのこと。出撃前、撮影地情報と天気予報のサイトは
閲覧して情報収集していたが、気象台のサイトを見て、大まかな傾向を掴む...
事実上、初めて撮影に出かける地域なのに、いつまで経っても<ダメ鉄>。

でも、前夜、「明日の会津地方は午前中は晴れ」の予報に喜び勇んで、会津高田駅
近くのタクシー会社に、朝7時過ぎの配車を予約してしまっていたのである。
そう、早めにキャンセルの電話を入れておけば良かったが、

「いったん予約したものをキャンセルするのは申し訳ない...」などと、
意味不明なことを考えて、思い悩んでしまうのが<変態鉄>。

ローカル線らしくダイヤは高校生の登下校に合わせた時間帯に設定されていて。
この後、8時台に上下列車があって、10時過ぎに上りが通ったら、あとは午後まで
列車が来ないというダイヤ設定。朝8時台の2本が「狙い目」になりそうだと...

運転手さんも気の毒そうに...
「これだけの霧だと9時...、10時頃に晴れてくるのでは!?」ということで。

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【2018年10月29日7時27分】 福島県大沼郡会津美里町八木沢付近

目的地は「蓋沼自然公園ゲート前」、タクシーに乗ってしまえば10分少々、2,000円
ほどの運賃だった。

「紅葉でも撮りながら...」
そんな運転手さんのコトバに見送られ。ちなみに公園の開門は8時半。
只見線の線路が見えないとガッカリしている<変態鉄>を下ろしたら、タクシーは
転回して高田の町へと戻っていくのだった。

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【2018年10月29日7時34分】 福島県大沼郡会津美里町八木沢付近

その「蓋沼自然公園」、小高い山の頂にある広大な公園だそうで。
キャンプ場が有名だそうで、一般の開門時間は朝8時半から夕方まで。その時間なら
園内に入って駐車場から俯瞰するというのも、只見線の撮影地としては有名
なのだそうで。でも、高田の集落から、そのゲート前に至る山道の途中、
ところどころ、木々の間から只見線を俯瞰できるとのことで、多くの撮影地ガイドに
掲載されており、ポスターの写真などにも蓋沼公園周辺からの俯瞰撮影の写真が
使われている。つづら折りの山道を少しずつ下りながら、視界が開けた場所を
探して。公園の開門前、当たり前だが、誰も来ない、何も見えない場所に自分だけ。

でも、目を凝らせば紅葉が美しく。眺めたり、カメラを向けたり。
兎に角、霧が晴れるのを待つしか無い...と。8時台の2本は諦めて、会津高田駅を
10:14発の第426D列車のキハを写し止めることに全てを賭けるつもりだった。

1枚上の写真から10分後の同じ場所である。

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【2018年10月29日7時45分】 福島県大沼郡会津美里町八木沢付近

タテ位置とヨコ位置の違いはあるが、この写真の右の方に紅葉した1本の木が。
それが前の写真の中央に見えている。そう、霧は濃くなったり薄くなったりを
繰り返しつつ、まさに“一進一退”。明るくなってきたかと思えば、みるみるうちに
自分の足下さえ見えない位の濃さになってきたり...

遠くの方からキハのタイフォン、少し遅れて、かすかにエンジン音が風に乗って...

<撮り鉄>として、一番、やるせないというかショックな場面である。

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【2018年10月29日8時51分】 福島県大沼郡会津美里町八木沢付近

「目の前の視界が広がり始めた」と実感できるようになってきたのは9時頃。
真っ白で何も見えなかった空が、だんだん青みを帯びてくるのを感じつつ。

<変態鉄>が“視界が開けた場所”だと思って待機していた場所からは線路が
見えない...ということを知ったのも、このときだった。

蓋沼公園へと続く道の途中から、線路を見ることができる場所はいくつかあるのは
先ほど、運転手さんに教えていただいていて。下の方の撮影地を探そうと。

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【2018年10月29日9時14分】 福島県大沼郡会津美里町八木沢付近

曲がりくねった山道を数百メートル下っていったところに...。
道路のヨコはすぐに崖のような急傾斜になっているはずだが、ガードレールの
隙間に、何だか不思議な盛り土のようなものが。

そう、まさに“お立ち台”発見。ちょっと「勝利」を確信し始めた<変態鉄>
だったのである。(つづく)

(※)撮影時刻は写真データのものです。したがって、実際の時刻とは多少前後します。

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